宇宙には想像できないほど多くの星があり、惑星もたくさん見つかっています。しかし待てど暮らせど、地球外生命体は中々見つかりません。一体なぜなのでしょうか。
新たな研究で、宇宙には生命に必須の元素であるリンが少ないため、私たちの知る形での生命は宇宙では希少であることが示されています。
リンは生命において多くの役割をもつ、必須の元素です。DNAの基盤となっているだけでなく、細胞を囲んでいる細胞膜もリン脂質で出来ているし、情報伝達のスイッチとしても働いています。リン酸化因子が、生命誕生の鍵をにぎっているのです。
ではそのリン自体は、どこから生み出されるのでしょうか。それは質量の大きい恒星が最後に起こす超新星爆発からだといわれています。
しかし新たな研究が、典型的な超新星爆発では、リンができるための条件がそろわない可能性があると示しています。
カーディフ大学の天文学者ジェーン・グリーブス博士とそのチームは、巨大なカシオペヤ座A(Cas A)と、典型的なパルサー星雲である蟹星雲の爆発残骸について調べました。
使用されたのは、ラ・パルマ島にあるウィリアム・ハーシェル望遠鏡。牡牛座方向の6,500光年先にある蟹星雲の光から、リンと鉄を示す特徴を調査しました。
この蟹星雲とCas Aの2つを比べたところ、驚いたことに、蟹星雲のリンはCas Aのものに比べてずっと少なかったのです。パルサー星雲に比べ、Cas Aは今も膨張を続ける残滓であり、稀な超巨大恒星の超新星爆発によるもの。つまり、典型的な超新星爆発では十分なリンができないということです。
地球に生命がいるのは、非常にラッキーなことに条件の整った稀な超新星爆発から十分に近い距離にあったからかもしれません。研究者たちは、他の超新星爆発残骸についてもリンを欠いているのか調べる予定です。
果たして地球外生命体はもう見つからないのでしょうか。地球型の生命はリンを必要としますが、まだリンを必要としない生物がいる可能性もあります。希望を捨ててはいけません…。