音の一方通行
音を一方向にしか通さない音響ダイオードは、私たちにはあまり馴染みのない技術ですが、音響ノイズを取り除いたり、超音波画像などを鮮明にしたりする技術として、研究されています。
これまで一般的だった技術は、フォトニック結晶など特殊な材料をしようすることで、一方向に強制的に信号を伝送するものでした。
これは伝送効率が非常に悪く、伝送される波の強度を大きく下げてしまったり、周波数が元から変化してしまうという問題を抱えていました。
もっと複雑なシステムを使い、機械的な処理で音を一方通行にするものもありますが、電源が必要で取り扱いも難しくなります。
ところが、今回の研究では、単純に平行なアルミ板の凹凸構造だけで音の流れを制御しています。
この画像がその素子のモデルで、これは左から右へは音を通しますが、右から左へは音が伝わりません。
見ると最初は両側から対称に突き出たアルミ板が、その奥では互い違いになり、最後は中央を塞ぐように板が通っています。
この構造によって、この導波管では特定の周波数の音の共振を制御していて、実験では順方向へは2280Hzの音響を93%で伝送させることが可能だが、逆方向への伝送率はほぼゼロになったといいます。
映画やゲームには、拳銃の発砲音を消すサプレッサーという道具が出てきますが、あれも内部構造で消音をしています。
今回の研究は似たようなことをやっているものですが、音を単純に消すだけではなく、一方向については綺麗に通してくれるというところが画期的なところです。
だた、現状この方法では特殊な波形の音でしか利用できず、また利用可能な周波数も非常に狭い範囲に限定されているそうです。
実用段階にはまだ遠いようですが、単純な材料を積み木のように設計することで、音響ダイオードを実現させたという意味で、非常に興味深い研究だと言われています。
この研究は、カルフォルニア大学バークレー校の研究者チームにより発表され、4月17日付でアメリカ物理学会が発行する応用物理学の査読付き学術雑誌『Physical Review Applied』に掲載されました。
https://journals.aps.org/prapplied/abstract/10.1103/PhysRevApplied.13.041001