新型コロナウイルスに効果があるとして、抗ウイルス薬「レムデシビル」が世界中から注目されています。
レムデシビルは、もともとエボラ出血熱の治療薬として米製薬企業ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)が開発したものです。
米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)による臨床試験によると、レムデシビルを投与した患者の回復が31%早まったとのこと。
そして、今回、中国科学院(CAS)上海マテリアメディカ研究所(SIMM)の徐華強教授ら研究チームによって、レムデシビルが新型コロナウイルスに効く仕組みが解明されました。
RNAウイルスの増殖方法
新型コロナウイルスは、主に粘膜系を介してヒトの細胞に感染する「プラス鎖RNAウイルス」です。
RNAは、DNAが持つ遺伝情報からタンパク質をつくる際に用いられる「転写設計図」のようなもの。しかし、ウイルスの中には、DNAを持たず、RNAのみで成り立っている「RNAウイルス」があります。
このRNAウイルスはバックアップデータを持たない遺伝情報なので、安定性はありません。それ故に、ウイルス自体の遺伝的性質が変化しやすく、免疫やワクチンへの耐性を身に着けやすいのです。
そして、RNAウイルスの一種である「プラス鎖RNAウイルス」の中には、新型コロナウイルスも含まれ、人間の体内に侵入した後、自身のRNAを複製することで、増殖していきます。
もちろん、RNAだけで複製することはできません。
複製には、ウイルス内タンパク質である「レプリカーゼ(RNA依存性RNAポリメラーゼ)」が中核的な役割を担っています。
そしてレムデシビル(ヌクレオチド系薬剤)は、このレプリカーゼを標的にし、複製を阻害することができるというのです。