シロアリは高効率の再生可能エネルギーだった
シロアリの主な食物は枯死した植物であり、その主成分はセルロース(植物繊維の主成分である炭水化物)です。
ですから、枯れ木や、糞、植物などの廃棄物をリサイクルすることにより、生態系において重要な役割を果たしています。
そして、シロアリは食事の過程で水素を排出することも知られるようになりました。
シロアリの水素生成の秘密は、腸内の微生物にあります。
微生物の力を借りて、セルロースを分解しますが、この時に水素を発生させるのです。
水素は石油の3倍もの潜在エネルギーを有しています。加えて、燃焼しても水しか発生しないので、究極のクリーンエネルギーと言えるでしょう。
しかし、水素は空気中に約0.00005%しか含まれていません。
水素をエネルギーとして利用したくとも、「どこから集めるか」という課題があったのです。
ところが、シロアリは貴重な水素を高効率で作り出せます。
「JGI」に掲載された研究によると、シロアリには1枚の紙から2リットルもの水素を生成する能力があるとのこと。
これは、地球上でもっとも効率的なバイオリアクター(生化学反応装置)の1つと言えるでしょう。
実際に、枯死植物が豊富にある熱帯雨林の上空では、水素ガスが異常に高い濃度で検出されるようです。
つまり、世界中に生息するシロアリは、植物の自然サイクルが続く限り永遠に水素を排出し続ける「再生可能エネルギー」なのです。
現在、シロアリを利用した遺伝子工学によって、高効率の水素バイオリアクターの作成に注目が集まっています。
将来のエネルギー問題を改善するのは、害虫シロアリなのかもしれません。