集合による範囲感知
アリの集団行動は、周囲情報を感知するリーダーアリによって誘導されることが知られています。そして、このリーダーアリは荷物(食料)を運びません。
そのため、研究者たちは運搬係ではないアリたちに注目しました。
そうしたところ、そのアリたちが運搬係の集団から半径10㎝ほどの円形領域に広がっていることが分かりました。
ほんの数匹のアリしか遠くにはいませんでしたが、1匹のリーダーアリでさえ、グループを操縦し、障壁を回避するために10cmの距離をガイドすることができました。
また運搬アリが立ち往生した際には、リーダーアリが常に横断可能かもしれないルートを提示していたことも明らかになりました。
そして、障害物を迂回する道を見つけるまで、グループ全体が協力して、提示されたルートを探索することができるようになったのです。
このようにして、アリたちは自分たちの感知範囲を遠くまで広げており、障害物となり得る情報を得て、正解ルートを見出していたのです。
この「集団による感知方法」が迷路を解く鍵となるかどうかを確かめるために、研究チームは、アリと同様の「集団感知」をコンピュータに学習させ、迷路を解く能力が向上するかテストしました。
その結果、彼らの予想通り、コンピュータは感知能力を向上させ、アリと同じ解答パフォーマンスを示しました。
また、コンピュータの感知範囲をアリより広くしてもパフォーマンスが良くなることはありませんでした。
これは、アリが特定の迷路に最適な感知範囲を見つけ出していたことを示唆しています。
ファインマン氏によると、アリは集合知によって感知範囲を広げています。そして、この感知能力は、無秩序な環境を移動するための既知のコンピュータモデルより、移動時間の点で非常に優れているとのこと。
アリたちの集合知は、個のパフォーマンスを大きく凌駕します。この仕組みをコンピュータやインターネットとの相性が良いものです。まだまだ自然界に学ぶことはあり、それによって、コンピュータは集合知としてのさらなる能力を獲得するのかもしれません。
研究の詳細は5月12日、「eLife」に掲載されました。