アメンボと言えば、川や田んぼで見かけることがほとんどですが、中には「ウミアメンボ」という海上に住む種もいます。
ウミアメンボは、昆虫でありながら、海への進出を成功させた数少ない生物です。
昆虫は地球上で最も繁栄しているにもかかわらず、海に活動範囲を広げることはありません。魚や海鳥などの天敵、荒波、太陽の直射など、海は小さな昆虫にとって危険すぎるのです。
では、ウミアメンボはなぜ海に適応できたのでしょうか。
今回、キング・アブドゥラー科学技術大学(サウジアラビア)の最新研究により、海上での生存を可能にする驚異の身体能力が明らかにされました。
水没を防ぐ体毛メカニズム
研究チームは、アラビア半島とアフリカ北東部に挟まれた「紅海」で採取した2種のウミアメンボ(Halobates germanus、Halobates hayanus)を調査しました。
ウミアメンボは非常に小柄で、胴体の直径は3.4ミリ、横幅は1.8ミリしかありません。
チームは、ハイスピードカメラと電子顕微鏡を用いて、ウミアメンボの体毛を調べました。
すると、体毛の形や長さ、直径が、体の部位ごとに違っていたのです。特に脚部では、毛先がゴルフクラブのように湾曲しており、毛と毛の間に水が入らない作りになっていました。
また、湾曲した体毛が密に詰まっていることで、中に空気をため込んでおけるので、アクシデントで水没しても、全身を包むようにバブルが作られ、水上に再浮上できるのです。
実験でウミアメンボに水滴を落としたところ、体毛がそのすべてを弾いてました。