- 350万年前、天の川銀河中心の大質量ブラックホールは巨大なフレアを起こしていた
- このフレアの放射線は20万光年離れたマゼラニックストリームのガスを電離させて夜空を光らせた
- この現象は100万年近く続いた可能性があり、人類の祖先はこの幻想的な夜空を見ていたかもしれない
太古の夜空はどのような景色だったのでしょうか?
人工の明かりがなかった時代、今より星々が数多く輝いて見えたのは確かでしょう。しかし、他にも今は見ることのできない特別な光景が広がっていたかもしれません。
新しい研究は、350万年前、天の川銀河の中心にある大質量ブラックホール「いて座A*(いてざ・えーすたー)に大規模な水素雲が落下し、猛烈なフレア爆発を起こしていた証拠を発見しました。
この銀河中心の大爆発は、遠くマゼラン星雲から伸びるガスの帯「マゼラニックストリーム」さえ明るく照らして輝かせたというのです。
この現象は夜空にぼんやりと幻想的な光の雲を作り出しました。人類の遠い祖先はアフリカの平原でそんな不思議な夜空を眺めていた可能性があるのです。
太古の夜を彩った不思議な天体現象。これを解き明かした、ロマンチックな研究はどのようなものなのでしょうか。
ブラックホールの閃光が宇宙を照らす
私たちの属する天の川銀河からおよそ20万光年の距離に「マゼラニックストリーム」と呼ばれるガスの帯が存在しています。
これはマゼラン星雲(大マゼラン雲と小マゼラン雲)が、飛行機雲のように残した非常に長いガスの軌跡です。
(ちなみに、マゼラン星雲という呼び名は、星雲と銀河の区別ができなかった時代に付けられたもので、実際は星雲ではなく銀河です)
マゼラン星雲は地球からもっとも近い銀河ですが、20万光年近く離れたこの天体と、天の川銀河は基本的に独立していて、影響を及ぼし合うことは無いと考えられていました。
しかし、350万年前に起きた天の川銀河中心の大爆発は、マゼラン星雲が残したガスの軌跡、「マゼラニックストリーム」まで照らして輝かせていたのです。
こうした痕跡は、マゼラニックストリームの背後にある、はるか遠方の宇宙から届くクエーサー(恒星のように光り輝く天体のこと)の光を解析することで得られました。
クエーサーの光は紫外線領域で豊富な情報を持っています。そこには、かつてマゼラニックストリームが強力な放射線により電離(イオン化)していた証拠も含まれていたのです。