東アジアに広く分布する「ニホンウナギ」は、海で生まれ川で成長する回遊魚です。
5〜6センチほどの稚魚が海から川に移動し、河川内で10数年かけて約1メートルまで成長します。ところが、70年代からその数が減少しており、2013年には環境省のレッドリストにて絶滅危惧指定されました。
その主な原因は、ダムや堰の建設です。
巨大なダムや堰がウナギの遡上を阻むことで、成長場所として重要な河川への移動が困難になっています。
ところが今回、ニホンウナギが、鹿児島県・網掛川にある高さ46メートルの龍門滝を登って上流まで移動していたことが、九州大学の研究により明らかになりました。
全高46mの滝を「うなぎのぼり」!
ニホンウナギは、エラの他に皮膚呼吸ができるため、体と周囲が湿ってさえいれば陸上でも移動可能と言われています。
しかし、ダムや滝が高くなるほど、遡上の成功率は低下することが分かっていました。今回の龍門滝は、高さ46メートル、幅43メートルに達し、ニホンウナギが登れる高さではありません。
ところが、網掛川の各ポイントでニホンウナギの生息数を調べたところ、比較的頻繁に龍門滝を突破していることが判明したのです。
また、龍門滝上流にいるウナギを調べてみると、小さな稚魚から大きな成魚まで幅広く見られました。
ニホンウナギは、サイズが大きくなるほど移動活性が落ち、ひとところに留まるようになります。そのため、龍門滝を遡上するのは、若齢のウナギに限られるようです。
さらにウナギの遡上には、ダムや滝の高さだけでなく、壁面の状態が大いに関係していました。
龍門滝の壁面は、ほぼ垂直であるものの、デコボコした亀裂や湿り気のおかげでコケが繁茂しており、ウナギが昇りやすい条件を満たしていたのです。
このことからウナギは、ダムや堰が高くても壁面に起伏と湿り気があれば遡上可能で、逆に、低くても壁面が乾いて凹凸がなければ登れないものと思われます。
研究チームは「この結果を応用して、ウナギの遡上に適した魚道を設置することで、上流への移動を促し、種の減少を止めることができる」と述べました。
今後は遡上の成功率やルート、所要時間などを詳しく調べることで、魚道に必要な条件を解明していく予定です。
研究の詳細は、7月7日付けで「Ichthyological Research」に掲載されました。
https://link.springer.com/article/10.1007/s10228-020-00759-1
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