生殖能力を犠牲にするかわりに、ハエや線虫の「寿命を延ばす薬」が発見される

寿命延長薬は子孫をとるか寿命をとるかの選択を迫る/Credit:depositphotos

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生殖能力を犠牲にするかわりに、ハエや線虫の「寿命を延ばす薬」が発見される (2/3)

2020.07.15 Wednesday

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ミフェプリストンは妊娠をキャンセルするほどの強いバランサー

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ショウジョウバエと線虫は遺伝的に遠い/Credit:depositphotos1. depositphotos2

ショウジョウバエを使った実験において、ミフェプリストンははじめ、交尾後のメスの寿命を延長させる薬として認識されました。

しかしなぜメス、しかも交尾後の個体だけに寿命延長効果があるのかは、わかりませんでした。

そこでランディス博士は、ミフェプリストンがショウジョウバエにどのように働くのかを調べました。

結果、ミフェプリストンは強いバランサーとして働いていることが判明します。

メスのショウジョウバエは、交尾によってオスから性ペプチドを受け取ることで、体が生殖モードに転換しはじめます。

しかしながら生殖モードへの転換は身体の負担が大きく、ホルモンバランス(特に幼若ホルモン)が大きく変化して、体の各所の細胞で炎症が発生し、結果、メスの寿命は短くなってしまします。

しかしミフェプリストンは、このオスから与えられる性ペプチドの効果を打ち消すバランサー能力を発揮し、メスの体のホルモンバランスを正常化すると共に、体の変化に伴う炎症も軽減していることがわかりました。

メスの寿命が延びていたのは、ミフェプリストンの強い作用により、生殖モードをキャンセルしていたからだったのです。

しかしこの時点では、ミフェプリストンの「生殖能力を対価とした寿命延長」効果がショウジョウバエだけに作用する可能性もありました。

そこでランディス博士はミフェプリストンを、ショウジョウバエとは遺伝的に大きく異なる線虫にも与えました。

線虫は雌雄同体の生物であり、もしミフェプリストンの寿命延長効果がショウジョウバエのメスだけに効く薬である場合は、線虫には効かないはずでした。

しかしミフェプリストンは線虫にも効き目を発し、線虫の生殖能力を奪うと同時に、寿命を延長させる効果をみせました。

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ヒト、ショウジョウバエ、線虫の進化系統樹での位置関係/Credit:京都大学

この結果からミフェプリストンは、ハエや線虫などの多細胞動物の生殖や妊娠をバランサーとしてキャンセルする力があり、その副産物として寿命延長効果をもたらすことがわかりました。

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