性転換したオスは飛べなくなる?
研究チームは、ラボ内で性転換されたオスを数匹作り出し、世代間での遺伝子の伝わり方を調べました。
その結果、性転換されたオスは、野生のメスと交配して、同じく性転換したオスの子孫を作れることが確認されています。オスの子孫は、Nix遺伝子のコピーを独自に発現しており、長い世代にわたって安定的に遺伝させていました。
つまり、性転換したオスを野生に放てば、定期的に遺伝子操作したオスを投入しなくても、ひとりでにNix遺伝子を遺伝させるオスが増えるというわけです。

一方で、大きな問題も見られました。なんと性転換したオスは、すべて飛翔能力を失っていたのです。
分析の結果、Mローカスに含まれる「ミオセックス(myo-sex)」という遺伝子が抜け落ちていました。実験で、野生のオスからミオセックス遺伝子だけを不活性化させてみると、空を飛べなくなることが判明したのです。
そこで問題解決のため、性転換したオスにミオセックス遺伝子を組み込むと、見事に飛翔能力が回復しました。
飛翔は、採餌や交配、天敵からの逃走に用いられるため、Nix遺伝子拡散のためには外せません。性転換したところで、飛べない蚊はただの蚊なのです。
性転換したオスを野生に放つには、まだ研究が必要ですが、自然や生態系への害がなければ実用化される日もそう遠くないでしょう。
研究の詳細は、7月13日付けで「PNAS」に掲載されています。
https://www.pnas.org/content/early/2020/07/10/2001132117
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