- 100万人以上を対象としたゲノム解析の調査で、血中の鉄分が長寿と関係あるとわかった
- 血中の鉄分が高い場合、早期に死ぬリスクが増大する
- 現状メカニズムは明らかでないが、健康に長く生きるために鉄分を低く抑える必要がある
天文学では、宇宙初期に生まれた長寿の星ほど鉄分は少ないことがわかっています。
そして、どうやら新たな調査によると、人間も長寿な人ほど血中の鉄分濃度が低く保たれていたようです。
新たな研究は、100万人以上を対象とした調査から、長寿の人に共通する遺伝要素に鉄分の代謝が関連していたと報告しています。
人間は非常に長寿の90歳以上まで元気に生きる人がいる一方で、60歳過ぎで亡くなってしまう人がいます。
こうした寿命の違いがどのように起きるかは、まだ明確になっておらず現在さまざまな研究が進められています。
そのため「〇〇する人は早死するかも」みたいな話題をよく見かけるようになりましたが、この研究成果は「赤身のお肉が好きな人は早死するかも」という話になるかもしれません。
寿命の研究
寿命を評価するには、寿命、健康寿命、極端に長寿な人の年齢(長寿記録)という3つがあります。
健康寿命は病気、疾患などが出ずに健康に暮らせていた年数で、これは平均寿命より10年近く短い傾向があります。
こうした調査によると、多くの人が60歳までに慢性疾患などを経験して死亡することが示されています。しかし、それ以外の人は、非常に高齢まで到達でき、亡くなる数年前まで大きな疾患が現れることがありません。
これはライフスタイル、環境、遺伝的な要因、運などさまざまな要素が絡み合っていて、遺伝調査で何が要因になるかということを示すことは非常に困難です。
ただ遺伝調査は十分に大きなサンプル数を用意することで、人の老化プロセスに関与する遺伝子とその経路を特定できる可能性が高くなります。
そこで、今回の研究は寿命に関与する遺伝要素を識別するために、非常に長寿な人や健康寿命などに焦点を当てて、100万人以上の遺伝情報から関連する遺伝要素を解析しました。
すると、分析を通して遺伝子の10の主要な領域が長寿命に関連しているということが突き止められ、これらの領域が鉄分の代謝に関わっているということもわかったのです。
しかし関連しているからといって、鉄分が寿命と因果関係を持つのか? というのは別問題です。そこで研究チームは「メンデルランダム化」という統計学の手法を使って、因果関係の調査も行いました。
そして、その結果、血中の鉄分濃度が寿命に影響しているということも示されたというのです。
これは簡単にいってしまえば、血中の鉄分が高いと、早期に死ぬリスクを高まるということになります。