海流で変わる細菌の活動
大型の容器に、自然の海水や湖水を入れて人為的に操作した環境を作り出し調査することを「メソコズム実験」といいます。
今回の研究は、大槌湾で採取した海水200リットルをタンクに入れて植物プランクトンを大量発生させ、10日間に渡ってDMSP、DMS濃度を測定しました。
このメソコズム実験から、研究チームはこれまで詳細が明らかではなかった、DMSを生成する細菌の遺伝子タイプや種類を特定することに成功しました。
東北の海は、北から来る冷たい海流の親潮と、南から来る温かい海流の津軽暖流がぶつかり合っています。
実験の結果を踏まえて周辺の海を調査すると、親潮域では細菌は他の化学物質と結びつけて二次的にDMSを生成する代謝を行っていましたが、津軽暖流では直接DMSを生成する細菌が活動していました。
海流によってDMSの生成を行う細菌の遺伝子タイプが棲み分けられていて、DMSの濃度にも変化を起こるとわかったのです。
DMSは海の上で雲を生成する役割も持っています。磯の香りの原因物質から、今回の結果は、大気ー海洋間でどのように物質交換が行われ雲生成のプロセスに影響するかという一端も明らかにしたのです。
こうした知見は、今後ますます大きな変動が予想される地球環境に、人類が対応する際にも指針となるだろうと期待されています。
この研究は、東京大学 大気海洋研究所、韓国生命工学研究院の研究チームより発表され、論文は科学雑誌『Frontiers in Microbiology』に7月13日付けで掲載されています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2020.01372/full