「タニストロフェウス (Tanystropheus)」という絶滅した太古の生物をご存知でしょうか。
ラテン語で「長い脊椎」を意味する名前の通り、全長6メートルの約半分が首という超首長モンスターです。
化石の初発見は1852年のことですが、それ以来ずっと研究者を悩ませ続けている2つの問題があります。
1つは「タニストロフェウスは陸棲なのか水棲なのか」ということ。もう1つは「発見されている大型と小型の化石標本は、同種なのか別種なのか」ということです。
この2大問題が、シカゴ・フィールド自然史博物館とスイス・チューリッヒ大学の最新研究により、ついに解決されました。
単刀直入にいうと、タニストロフェウスは主に水中暮らしであり、大型と小型は別種であったようです。
せっかく長いのに、首ガッチガチだった
タニストロフェウスが現れたのは、約2億4200万年前の三畳紀中期です。当時の世界は、大型爬虫類が水中を支配し、陸上には恐竜が出現し始めた頃でした。
タニストロフェウスの化石は、現在のスイスに当たる地域で出土しており、大型とそれによく似た小型の標本が見つかっています。
大型は全長が約6メートルで(その半分の3メートルが首)、小型は全長1メートルほどです。既知の脊椎動物の中では、全長に対して首の長さが占める割合が最も大きな生物とされています。
しかし、首の長さのわりに骨の数は少なく、柔軟性にも乏しかったようです。首はせいぜい左右に振れる程度で、曲げ伸ばしは出来なかったとか。
研究チームのオリビエ・リエッペル氏(フィールド自然史博物館)は「タニストロフェウスは、極端に長い首に、胴体が太ったワニのような生き物で、その奇妙な体つきは、陸上にも水中にもそぐわないように思われる」と話します。