霊長類の大きな喉頭
調査された霊長類には、体重わずか110グラムのピグミー・マーモセットから体重120キログラムのニシゴリラまでさまざまな種類が分析されています。
霊長類と肉食動物(クマやトラなど)は、似たような社会構造を形成していて、似たような生息地で生活し、体の大きさも似たような範囲を持っているため、比較群として多くの研究で利用されています。
調査の結果、霊長類の喉頭は同程度のサイズの肉食動物と比べて平均で38%も大きいことがわかりました。
さらに他の種では喉頭のサイズと体の大きさの比率がだいたい固定されていたのに対して、霊長類は体と喉頭のサイズの関連性が低く、サイズにさまざまなバリエーションを持っていました。
研究では、喉頭の大きさが声のピッチの変化と関連することも示されていて、声のコミュニケーションにおいて喉頭のサイズが重要な役割を果たしていることがわかります。
実際、霊長類の多くの種が、他の種よりも豊かで変化に富んだ声帯をもっており、研究チームは霊長類の「進化の柔軟性」が喉頭をこのように進化させたのだろうと考えています。
今後の研究課題は、何がこのような喉頭の急速な進化を可能にさせたのか明らかにさせることだと研究チームは話しています。
そこには摂食行動や酸素調節、また生息地ごとに必要となるコミュニケーションの違いなどが関係していたと考えられます。
喉頭というピンポイントな進化の違いを明らかにした今回の研究は、哺乳類グループ間での変化を調べる将来的な研究にも、役立つ道筋を提供しています。
この研究は、スタンフォード大学の神経科学者Daniel L. Bowling氏を筆頭とした研究チームより発表され、生物学を扱う科学雑誌『PLOS Biology』に8月11日付けで掲載されています。
https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3000764