人間の臭いの起源

今回の研究は、ワキガや体臭に悩む人々にとっては間違いなく朗報となるでしょう。
現実的な成果としては十分かと思われますが、ラデン氏らはもう一歩深く謎に踏み込みました。
すなわち、臭いは「いつ」から、そして「なぜ」存在するのか? という疑問です。
人類が誕生してからほとんどの期間、狩猟によって得られる肉は重要な食料源でした。
ですが臭いは、狩猟を行う上で最悪のマイナス要因となるだけでなく、ヒトより巨大な肉食獣にとっては自分たちの場所を知らせる目印にもなってしまいます。
謎を解明するために、ラデン氏らは原因菌の遺伝子を分析し、臭いの起源を探りました。
結果、悪臭生産を行うブドウ球菌は、私たちが初期の霊長類であった6000万年前から存在していたことが判明します。
つまり私たちは人間に進化するより遥か前の原始的なサルであった頃から、悪臭生産菌と共に生活し、人類になった以降も悪臭生産菌との共存を続けていたのです。
このような長期の共存生活は、互いに何らかの利益がある共存共栄の関係がなければ維持できません。
しかし狩猟の効率を下げ、天敵にみつかりやすくする悪臭に、いったいどんな進化上の利点があったのでしょうか?