ダムを増やしても手遅れ?
ところが、1990年代に入ると、ダムの影響力は薄れていました。世の中に「巨大ダムが自然環境を破壊している」という考えが広まり、数多くの建設プロジェクトが中止されたためです。
それと同時に、温暖化のスピードが加速し、グリーンランドの氷河融解や海水の熱膨張が進んだことで、海面上昇に拍車がかかりました。
その証拠に、海面上昇率は過去30年で急激に上がり、現在では年間3.35mmのペースになっています。
では、ダムの数を増やせば、海面上昇は防げるのでしょうか。
フレデリクス博士の答えはノーです。その理由について次のように説明します。
「これまではダムの建設により、年間の海面上昇を約0.8mm遅らせることが可能でした。しかし、ここ10年で、海面上昇率は年間4mmほどまで来ています。つまり、海面上昇を止めるには、巨大ダムの建設数を5倍に増やさなければなりません。それは経済面でも環境面でも不可能です」
その上で、フレデリクス博士は「ダムの建設より良い解決法は、氷河の融解や熱膨張を促すCO2の排出量を削減することでしょう」と指摘します。
大量のバケツを作る前に水道の元栓を閉めろということですね。
研究の詳細は、8月19日付けで「Nature」に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2591-3.epdf