火星の接近の観測をしよう
どこで見える? 火星の探し方
地球に最接近する10月6日頃だと、夜21時頃に東の空に見えます。そのとき、夜空でもっとも明るい赤い星で、まず間違いありません。
周囲には暗い秋の星ばかりですから、ひと際明るく目立っています。
そこから明け方まで、東から南へ移動するのを一晩中見られますよ。
なぜ今年の接近に注目すべきなのか
火星の公転周期は687日、地球の公転周期は365日なので、地球のほうが太陽の周りを1周りするのが早く、火星を追い越していきます。そのときに火星と地球が接近するのですが、その周期は約780日。
つまり、約2年2カ月ごとに地球と火星は接近します。
ところが、地球の公転軌道は円に近いのに、火星の公転軌道は楕円形。このため、近づくといっても年によってその距離は大きく差があります。
小接近と大接近のときでは、地球と火星の間の距離や、火星の視直径は倍ほども違うのだとか。
大接近のときは、望遠鏡で火星の表面の模様まで観察できるチャンスです。
前回の接近の2018年は、大接近だったので話題になりましたが、残念ながら火星に砂嵐が起こっていて、表面の模様の観察はできませんでした。
今年は大接近ではなく「準接近」ですが、地球と火星の距離は大接近のときと大きく変わらず、火星の表面の模様の観察が期待できます。
大接近となると、周期は15~17年に一度と気の遠くなる長さ。今年に匹敵する準接近レベルでも、13年後の2033年です。となると、この観察の好機を見逃せないですよね。
火星の観光名所? 観測の見どころ
火星を肉眼や双眼鏡で観測する際は、赤い色を意識してください。火星の土には鉄の酸化物が多く含まれるため、赤さびによって赤く見えます。
また、観望会やライブ配信で望遠鏡による大きな映像が見られたら、表面の模様は要チェックですね。
注目したいのは、もっともわかりやすい「極冠」と「大シルチス」、そして「模様の変化」です。
まず「極冠(きょっかん)」は極地方にある、氷やドライアイスでできた白っぽい部分。
地球は地軸が23.4°傾いているため季節の変化がありますが、火星もそれに近い25.2°傾いており、同様に季節の変化があります。
季節にともなって極冠付近の温度が変わるため、極冠は大きくなったり小さくなったりします。
今回の最接近の頃には、南極冠が地球からよく見える向きに火星の自転軸が傾いているそう。ただ、火星の南半球は夏なので、極冠は小さい時期とのことですよ。
次に「大シルチス」は火星の中央あたりに位置する、もっとも黒い部分。インド半島をひっくり返したような三角形ぽい形をしています。黒っぽいのは明るい砂に覆われておらず、岩盤が露出しているからでは、と考えられています。
そして、火星は約24時間40分で自転しているため、観察する日時によって見える模様の位置が変わります。
例として、上の画像は2018年のときのもの。
もしも複数回、観測する機会がありましたら、模様の変化を見るのも面白いと思います。
また、砂嵐が起きて模様が薄くなったり、見えなくなったりすることもありますよ。
さらに、観測にまつわるこんな話があります。
1877年の大接近の際、イタリアの天文学者が火星を望遠鏡で観察したら、線状の模様が見えました。
そこでイタリア語でCanali(溝・水路)と記録したのですが、英語に翻訳された際 Canal(運河)と誤訳されてしまいました。
そのため、運河を作れるくらい高度な文明を持った火星人がいるはずだ、と考えられるようになったそうです。
もちろん、時代とともに観測や探査を経て否定されるわけですが、観測の際にどれが「運河」に見えたか想像するのも面白いかもしれませんね。