数値シミュレーションによるM87 *の1年間の変化を表すアニメーション。
数値シミュレーションによるM87 *の1年間の変化を表すアニメーション。 / Credit: G. Wong, B. Prather, Ch. Gammie, M. Wielgus & the EHT Collaboration
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ブラックホールの影は”揺れている”と判明!長期観測データから発見された未知の性質とは? (3/3)

2020.09.28 Monday

前ページ揺らぐブラックホールの影

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揺らぐ影の原因は? ブラックホールには何が起きているのか?

角度を変えて見た場合のブラックホール。
角度を変えて見た場合のブラックホール。 / Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman

ぼんやりしたブラックホールの画像からでは、暗い影の意味がよくわからないかもしれません。しかし降着円盤は光速に近いスピードで回転しているため、地球から遠ざかるように回転している部分は、光の勢いがドップラー効果によって減衰されて暗く見えるのです

反対に地球に向かって手前に回転している部分は輝きが強化されて見えます。

過去の記事でも解説していますが、観測されたブラックホールの姿は降着円盤を正面から見ています。しかし、ブラックホールは強力な重力源のため、手前や裏側に回った円盤の光が歪んで、ブラックホールを上下に囲むリングのように見えているのです。

では、なぜ暗い影の部分が変化するのでしょう?

研究者はそれが円盤の回転に乱流が発生しているためだと予想しています。

ブラックホールに落下する塵やガスの円盤は、数十億℃まで加熱され、強力な磁場を生み出しています。そうした環境下で物質はイオン化し流れを乱していると考えられるのです。

ブラックホールの降着円盤や周辺の凄まじい磁場の影響は、ジェットと呼ばれる凄まじい物質の噴出現象にも関わっています。

ジェットはまだ完全にメカニズムが解明されていない現象です。今回の研究はジェットの解明にも結びつく重要な情報を含んでいます。

ブラックホールについては、いくつもの理論的モデルが存在していますが、その中には今回見つかったような影のぐらつき(円盤の乱流)を許容しないものがあります。

この発見は、そうした一部のモデルを除外し、より現実に近いモデルを選定するためにも役立つでしょう。

EHTプロジェクトは現在も拡張されていて、より豊富なデータセットが扱えるようになっています。

今後の観測から、ブラックホールの乱流のダイナミクスの研究は更に進んでいくだろうと研究者は語ります。ブラックホールの研究はまだ始まったばかりなのです。

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