ガラスが切れる「ケモメカニカル効果」とは
ガラスは、ケイ素と酸素が結びついてできる物質です。
(画像中の大きな青丸がケイ素、赤丸が酸素、小さな青円が水素です)
水中でガラスをカットするとき、水素2つと酸素1つでできた水分子がガラスの構成分子と反応します。
ハサミで入れた割れ目に水分子がすばやく入り込み、酸素とケイ素の結びつきを断ち切ってしまうのです。
水分子の酸素がケイ素に、水素がガラス側の酸素に結びついて、ガラスの結合を解いていきます。
ハサミを進めるにつれて広がる割れ目に、水分子が次々と割り込んでいき、分子結合を切ってしまうのです。
これを「ケモメカニカル効果」と呼びます。
さらに、ケイ素と酸素の間に割って入った水分子は、ハサミがガラスを切るのに必要なエネルギーを小さくします。
つまり水中では、水がガラスを割れないよう保護しているのではなく、空気中よりも細かく簡単に割れやすくしているのです。
微小な水分子が割れ目に瞬時に入り込んで、分子の結合を断ち切ることで、ガラスが砂のように削り落とされていきます。
そのおかげで、水中ではガラスを好きな形にカットできるのです。
実はアメリカ先住民たちは、数百年前からこの事実を知っていて、ガラス質の矢先を鋭くするために一度水に濡らしてから削っていたとのこと。
この実験は自宅でも簡単にできるようですが、お試しの場合は厚手の手袋を忘れないようにしましょう。