宇宙でもっとも音を速く伝える物質
この研究成果からチームは、音の速度は原子の質量に応じて減少すると予測しました。
すると宇宙でもっとも音を速く伝える物質は、固体の原子状水素(金属固体の水素)ということになります。このような状態の水素は100万気圧(地球大気圧の100万倍)以上の高圧の環境下でのみ存在できます。
そんな場所は、近場では木星のコアくらいしかありません。
そこで研究チームは予測を実験的に検証するため、250~1000ギガパスカルの固体原子状水素の性質に基づいた量子力学的計算を行って、固体原子水素を伝わる音速の限界を調査しました。
その結果は、やはり研究の予測と一致したのです。
こうして導き出された宇宙で最速で伝わる音の速度は、秒速36キロメートルとなったのです。これは非常硬いダイヤモンド中を音が伝わる速度の約2倍の速度です。
研究チームの計算式を適用した予測値が、実際の物質中を伝わる音速と一致しているならば、それは広く宇宙全体の媒体中を伝わる音の速度を予測する道具として使うことができます。
媒体中を伝わる音の性質は、現在物理学の研究ではとても重要な意味を持っています。
地球物理学の分野では地震波の伝わり方から地球の内部構造を探る研究を行っており、材料系の分野でも材料の特性を調べるために音波の伝達は重要なデータになります。
さまざまな媒体中の音速を予測するこの研究は、幅広く応用される興味深い知見を提供することになるでしょう。