脳が無い生物も「睡眠薬」で眠るだけでなく睡眠不足に陥る
研究者が詳細に観察した結果、ヒドラにも外観的には睡眠フェーズとも呼べる定期的な活動停止状態が存在していることが明らかになりました。
またこの睡眠フェーズは上の図のように、光パルスの照射によって覚醒状態へと変化させられることも判明します。
ただこの時点では、ヒドラの休憩がヒトなどの睡眠と同質だとは断言できません。
そこで研究者たちは、ヒトや魚類、昆虫など脳がある動物にとって広く「睡眠薬」となりうるメラトニンやGABAといった物質をヒドラに与えてみました。
すると、これらの睡眠にかかわる物質を与えられたヒドラもまた、活動停止状態に移行したのです。
このことは、脳が無い原始的なヒドラと脳があるヒトをはじめとした動物が、同じシステムによって眠っていることを示唆します。
またより睡眠の証拠を確実なものにするため、研究者たちはヒドラを睡眠不足にする実験を行いました。
ヒトや魚類、昆虫は睡眠不足になると共通の遺伝子が活性化することが知られています。
もしヒドラの休憩を邪魔することで、同じような睡眠不足にかかわる遺伝子が活性化する場合、ヒドラは眠るだけでなく、睡眠不足にも陥ると言えます。
そこで研究者たちはヒドラに定期的な振動を与えることで、ヒドラを持続的な覚醒状態に維持し、働いている遺伝子を調べました。
結果、強制的な覚醒はヒドラにおいてもヒトと同じような睡眠不足関連の遺伝子が41個も活性化していることが判明します。
この事実は、脳の無いヒドラの休憩が、脳があるヒトなどの睡眠と同質であることが遺伝子レベルで示されたことを意味します。