組織の歪みを感知するメカセンサータンパク質「PIEZO2」
私たちの体には力学的な刺激を感知するメカノセンサーと呼ばれる機能が存在しています。
今回の研究チームの一人アーデム・パタプティアン博士は、2010年に組織の歪みを感知するメカノセンサー「PIEZO2」とその姉妹タンパク質「PIEZO1」を初めて同定し、その功績から権威ある科学賞「2020年カブリ賞 神経科学部門」を受賞しました。
PIEZO(ピエゾ、圧を意味する単語)は、センサータンパク質の1種で、イオンチャネルタンパク質とも呼ばれます。
イオンとは電荷を持った原子のことで、イオンチャネルタンパク質は細胞の外膜に埋め込まれていて、何らかの刺激に応じて細胞内にイオンを透過させ電気の流れを生み出します。
神経を通じて脳に信号が伝わるのは、こうした細胞のイオンチャンネルが十分に働いて、イオンの流れが生じるためです。
PIEZOの場合、イオンチャンネルが働くきっかけになる刺激は、局所組織にかかる細胞膜の伸張です。
パタプティアン博士は10年間に渡る研究の中で、「PIEZO2」が全身のさまざまな臓器や組織に発現していることを明らかにしました。例えば、肺の伸びを感知して呼吸を調整したり、血管内で血圧を感知したり、また皮膚の触覚を媒介する役割も担っていることが判明しています。
私たちの身体感覚において、非常に重要な役割を果たしているタンパク質が「PIEZO2」なのです。