分子シミュレーションによって模擬されたガラス(右)。白丸赤丸は分子を表し不規則に配置されている。
分子シミュレーションによって模擬されたガラス(右)。白丸赤丸は分子を表し不規則に配置されている。 / Credit:東京大学
chemistry

ガラスは固体と液体の中間状態「分子の再配置が絶えず起こっていた」

2020.10.19 Monday

ガラスは固体か? 液体か? 物理学にはこんな議論があります。

これは微視的なガラスの分子構造を見た場合にわかることで、物理学的にはガラスは固体とは言い切れない不思議な構造をしているのです。

そんな不思議なガラスの状態について、10月15日に米国物理学協会が発行する学術雑誌『The Journal of Chemical Physics』に掲載された研究では、シミュレーションによりガラスが固体と液体の中間状態であることを明らかにしたと報告しています。

この研究は東京大学、中国上海交通大学、フランスグルノーブル大学の国際研究チームから発表されていて、新たな発見によるとガラスの分子は絶えず再配置を行っているのだそうです。

東京大学 https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0109_00442.html , ガラス産業連合会 http://www.gic.jp/museum/01_01.html#pagetop

本当は動いているガラス

日常生活の中ではガラスはどう考えても固体としか感じられませんが、冷えて固まっているように見えてもガラスは人間にはわからないとてもゆっくりとした速度で液体のように動いています

その理由は、ガラスが結晶構造を持っていないからです。

物理学において通常固体と言った場合、それは規則的・周期的に分子が配置された結晶のことを指します

水が氷に変わるときも、ランダムで不規則に動いていた分子は結晶として固体化します。

しかし、ガラスの分子は規則的な結晶を作りません。固体のように感じられても、分子は不規則・ランダムに配置されているのです。

氷とガラスの分子構造の比較。
氷とガラスの分子構造の比較。 / Credit:ガラス産業連合会

そのため、固体と一口に言っても、そこには結晶とガラスという2種類の状態があるのです。

次ページ分子シミュレーションによるガラス分子の熱運動の解析

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