軍事レーダーから生まれた「電子レンジ」
1945年の戦時下、アメリカの軍需品製造会社・レイセオンで、パーシー・スペンサーという技術者が「軍事用レーダー」の研究に励んでいました。
レーダーは当時、「マンハッタン計画(原子爆弾の製造計画)」の次に軍部が重視していたものです。
ある日、実験をしていたスペンサーは、ポケットに偶然入れていたチョコレートバーが、包装紙の中で溶けていることに気づきました。
そこからスペンサーは「レーダーのマイクロ波の前に立っていたから、電磁波でチョコが溶けたのだ」と考えます。
レーダーの中のマイクロ波発生装置には、強力なマグネトロンが入っていて、これが電磁波を出していたのです。
そこで彼は、このマグネトロンを用いて実験的に加熱装置を作りました。
レーダーのマイクロ波は、水分子を激しく振動させるのに最適な波長を持っていたため、水の加熱にピッタリだったのです。
その2年後、同社はこの装置を「電子レンジ」として販売。
ところが、試作品は高さ2メートル、重さ250キロもあり、値段も効果で商業的に大失敗しました。
1番の原因は、軍事用レーダーと同じ高出力のマグネトロンを使っていたことです。
今の電子レンジより5倍以上も強力で、ジャガイモが茹で上がるるまで2分もかかりませんでした。
その後、同社はより安価で小さなマグネトロンに変えて、65年に再販売。
これが家庭的な電子レンジとして普及していきました。