ホスフィンは検出できていなかった?
金星は地獄のような環境と表現されるように、表面は高温高圧で、酸性の大気に覆われた惑星です。
しかし、惑星としてはもっとも地球に近いとも言われていて、特に50km上層の大気は、太陽系の中でももっとも地球の気温、大気圧に近い環境だと考えられています。
そのため、金星の高層にある雲の中には、生命(なんらかの微生物)が存在するかもしれないと期待が寄せられているのです。
そんな中で2020年9月に報告されたのが、金星高層の大気中で検出されたホスフィンの存在です。
ホスフィンは、地球上で嫌気性(酸素を嫌う)の微生物が生成する物質として見つかります。
ついに金星上層大気で生命の兆候を掴んだかもしれない、ということで、ホスフィンの検出は話題となったのです。
しかし、多くの科学チームがこの検出については疑問を投げかけていました。
なんだか夢のない意見のようにも思えますが、科学者にとってはこれはとても良いことです。
性急な結論は出さず、まずは疑ってかかり、事実かどうか検証することこそ科学が発展する仕組みであり、新しい発見を論文として世界へ広く発表する意義でもあります。
新たな研究によると、ホスフィンとして検出されていたものは二酸化硫黄だったと述べています。
「この検証は対立仮説と一致しています。二酸化硫黄は金星大気中で3番目にありふれた化合物であり、生命の兆候と見なすことはできません」
今回の研究チームの1人、ワシントン大学ビクトリア・メドウズ教授はそのように説明しています。
一体なぜ、過去の報告は誤りだと考えられるのでしょうか?