自律的にジャンプするポリマーシェルの高速画像。
自律的にジャンプするポリマーシェルの高速画像。 / Credit: Yongjin Kim, UMass Amherst
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動力も人間の手も借りずに「自力で動き続ける新素材」を発見

2021.02.02 Tuesday

現在運用される小さなロボットなどは、移動するためにモーターなどを必要とします。

しかし、2月1日に科学雑誌『Nature Materials』で発表された新しい研究は、モーターなどなしに自律的に持続して移動できる素材を発見したと報告しています。

この素材は環境からのエネルギー循環だけに依存して動くことができ、ロボット工学などへ応用できる可能性があります。

UMass Amherst https://www.umass.edu/newsoffice/article/umass-amherst-researchers-discover
Autonomous snapping and jumping polymer gels https://www.nature.com/articles/s41563-020-00909-w

自律的にジャンプを続けるポリマー素材

蒸発の効果で素材がたわみジャンプする新素材。
蒸発の効果で素材がたわみジャンプする新素材。 / Credit: Yongjin Kim, UMass Amherst

この研究は実際動いているところを見ないと、何をしたのかよくわかりません。

上の画像は白いメダル状のものが、ぴょんと跳ねて階段を自ら登っていますが、これこそが今回開発された新素材の力だといいます。

通常の動き回る装置は、モーターなど何らかの動力を必要とします。しかし、この新素材はそれを必要とせずに動いています。

図解すると、下のような仕組みでこの素材は跳ね回っているそうです。

モーターなしで動く材料。
モーターなしで動く材料。 / Credit: Yongjin Kim, UMass Amherst

昭和に売られていたレトロなおもちゃに、ゴムを裏返して戻る力で跳ねるだけという謎のおもちゃ「ポッピンアイ」というものがありました。

この素材がやっていることは、このおもちゃに近いもののようです。

レトロ玩具「ポッピンアイ」
レトロ玩具「ポッピンアイ」 / Credit:思い出商店,YouTube

ただ、こうしたおもちゃは人間が手で裏返すなどの操作をしないと跳ねることはできません。

けれど、この素材のすごいところは、ゲルストリップが内部の液体を失っていく、蒸発や乾燥といった自然環境のエネルギー循環を利用することで強力な動きを生み出しているところです。

これによって、この新素材は、人間の手で状態をリセットさせる操作も、モーターなどの動力も必要とせず自律的に持続して動き続けることができるのです。

バネのような力は単純な筋力だけの動きに比べてはるかに速く強力な力を生むことができます。バッタなどの動きはその代表です。

研究者たちは、そうした動きを何の燃料も必要とせずに繰り返す方法を開発したのです。

環境から得られたエネルギーの流れだけを利用して動く素材。軍用ロボットへの利用が想定されている。
環境から得られたエネルギーの流れだけを利用して動く素材。軍用ロボットへの利用が想定されている。 / Credit: Yongjin Kim, UMass Amherst

まだ、この研究の持つ深い意義は伝わりにくいものがありますが、チームは今後、形状などによって予想される動きを研究していきモーター、バッテリー、その他のエネルギーを必要とせずに自律的・持続的に動作するロボットを設計していくと話しています。

実際、この研究は米国陸軍研究所から資金提供を受けていて、軍用ロボットなどの工学デバイスに転用される可能性があるようです。

間抜けなおもちゃのようにも見えますが、これは次世代ドローンの第一歩となるものなのかもしれません。

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