自殺願望と従来のケタミン治療
人はうつ病などによって、具体的な理由なく漠然と死を願う状態に陥ることがあります。その状態は慢性的に続く場合もあり、長年多くの人を苦しめてきました。
これまで自殺願望を減少させるために抗うつ薬が利用されてきましたが、うつ病患者の30%が少なくとも2種の抗うつ薬に効果を示しませんでした。
またいくつかの研究では「自殺傾向はうつ病や他の症状とは独立したものである」との見解も出てきています。
そのため近年では、従来の抗うつ療法とは異なる「自殺願望治療」が必要とされてきました。
そして現在注目されているのが、1950年代以降、全身麻酔薬および鎮痛薬として医療のために広く用いられてきた「ケタミン」です。
さまざまな研究により、ケタミンには重度のうつ病治療に効果があると判明。
さらに新しい研究では、ケタミンが自殺願望を大幅かつ迅速に減少させるとも分かりました。これは従来の抗うつ薬では達成できなかったことです。
ただし、それらケタミン投与研究のほとんどは「静脈への注射」による成果です。注射投与は実行可能ですが、費用がかかり、時に合併症を引き起こすおそれがあります。
そのためハーメンス氏ら研究チームは、より簡単で安価な方法である「経口投与ケタミン」の研究をおこないました。