遺伝子の進化スピードが異常に速いことが判明
タツノオトシゴ属(Hippocampus)は、約2500万年前のインド太平洋域で、最も近縁のヨウジウオ(Pipefish)から派生しました。
泳ぎの得意なヨウジウオに対し、タツノオトシゴ は腹ビレと尾ビレを失くし、代わりに、海藻やサンゴをつかむのに適した尾を進化させています。
最初は大きく2つのグループに分かれました。
研究チームのラルフ・シュナイダー氏によると「一方は、生まれた場所に留まり続けたグループ、もう一方は、アフリカ・ヨーロッパ・アメリカを経由して太平洋にまで広がったグループ」とのこと。
両グループを含む対象種から作成された今回の系統樹は、タツノオトシゴの種間関係や、分散経路について信頼性の高い結果を示しています。
まず、海流と種分布の関係を比較すると、タツノオトシゴは明らかに波に乗って各地に運ばれていました。
例えば、大しけの場合、荒波の中に投げ出された個体は、手近にある海藻や木片などにつかまり、時には数百キロの距離を流されます。
また、過去2500万年の間の大陸移動によって起きた海流の変化も、移動に大きな役割を果たしていました。
これによって、タツノオトシゴは世界各地の海に移動できたと見られます。
さらに、各生息地から20匹ずつサンプルを採捕し、同じ生息域における個体間の遺伝的変異も調べました。
すると、遺伝的なバリエーションが大きいほど、その地の個体数も多くなることが判明しています。
それから、タツノオトシゴは、海流に乗って世界中に広がっただけでなく、新しい生息地に驚くほどよく定着していました。
遺伝データを分析すると、彼らは移動の中でゲノムを大幅に改変しており、たくさんの遺伝子を失くしたり、新たに獲得しながら進化していることが分かっています。
これはつまり、タツノオトシゴが他の生物に比べて、非常に短いスパンで進化できるということです。
シュナイダー氏は「こうした海流の力と遺伝的変化の速さ、それによる適応力の高さが、広いエリアでの繁栄を可能にしたのでしょう」と結論しています。
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