細胞分裂の方向で問題が起きる
今回の研究では、若いマウスと加齢したマウスの毛包幹細胞を解析しました。
すると、加齢したマウスでは、細胞が特殊な非対称分裂を引き起こしているとわかったのです。これが表皮角化細胞へと分化する細胞を生み出していたのです。
これは放射線など細胞にストレスのある状況下でも、同様の幹細胞分裂が起こることがわかりました。
細胞分裂には軸があり、この方向で組織の構造や多様性を生み出しています。
通常は基底膜という細胞が張り付いている面に水平に分裂します。これは均等に同じ状態の幹細胞を生み出します。(対称分裂)
しかし、加齢やストレス化した幹細胞は、基底膜に対して垂直な分裂を起こします。(非対称分裂)
細胞の成分はすべて均一に広がっているわけではなく、ある偏りを持っています。
これを「細胞極性」といいますが、水平に分裂した場合、細胞極性は生まれませんが、垂直に分裂した場合、細胞極性が生まれてしまうことで、正しい自己複製にならないのです。
こうしたメカニズムで、細胞の老化や機能損失が発生していると今回明らかになったのです。
今回の研究は、幹細胞分裂プログラムによる器官の再生や老化の仕組みについて新しい視点を与えるもので、脱毛症の新しい治療薬開発に繋がることが期待されています。