生きている機械「ゼノボットMk2」が開発!
人類の技術は、ある種の線を既に踏み越えたのかもしれません。
SFなどの世界ではよく、生きた細胞を機械部品や制御装置として利用するという描写がなされていますが、急速に発展する現実の生物工学は、それらSF的な光景を現実世界で実現しつつあるからです。
去年の1月、アメリカの国防高等研究計画局(DARPA)から資金援助を受けた研究者たちは、カエルの筋肉細胞を1つ1つ組み上げて、歩行可能な生きている機械「ゼノボット」の初期型を作り上げました。
ゼノボットは上の動画のように水中を歩くだけでなく、筋肉細胞を再配置することで、荷物のけん引や集荷も可能な個体を作成することができました。
また原理的には、ゼノボットを中枢神経と接続することで、より統合的な機械として運用も可能でした。
しかし第一世代には大きな問題がありました。
組み立てを行うごとに、数百個もの筋肉細胞を1つ1つ組み合わせていかなければならなず、手間とコストが掛かってしまったのです。
手順を機械化したり3D印刷技術を用いることで高速化することは可能でしたが、そうなると別の費用がかかります。
そこで研究チームは新たなゼノボット開発するために、カエルの胚の様々な部位を切り抜いて性質を調べました。
すると驚くべき事実が判明します。
上の動画のように、研究者たちが受精から24時間経過したカエルの胚から皮膚細胞を切り出して培養したところ、
上の動画のように、勝手に球状に変形。
何故か「べんもう」をはやして泳ぎ始めたからです。
べんもうは人では精子などの細胞がもつ毛状の器官で、遊泳に必要な推進力を生み出す事ができます。
実験に使われたカエルの胚は、遺伝子操作が行われていない野生型です。
つまり、切り離された胚の一部は独自の判断でオタマジャクシになる代わりに「べんもう」を生産する細胞に変化し、泳ぐ能力を持った「何か」に変化していたのです。
また研究者たちが泳ぎ始めた、その「何か」をつかまえて分析した結果、脳や筋肉が存在しない皮膚細胞の塊のままであることが判明します。
これらの新発見を、研究者たちは早速、ゼノボットの開発に転用することにします。