自転速度がもっとも速い褐色矮星は、なぜかみんな同じ速度になる
褐色矮星は、質量が足りないために核融合の発火にまで至れなかった「失敗した星」です。
目に見えるような光はほとんど放つことはなく、赤外線波長で輝いています。
このため、60年代から存在は予想されていたものの、赤外線観測の技術が未熟な時代には見つけ出すことができず、初めて発見が報告されたのは1994年になってからです。
褐色矮星は宇宙にありふれた天体であり、天の川銀河だけでも数十億以上が存在していると考えられていますが、実際その内容については多くの謎が残っているのです。
今回の研究チームは、2020年1月に運用が終了したNASAのスピッツァー宇宙望遠鏡の全天観測(2MASS)データを使用して、褐色矮星の研究を行っていました。
彼らが調べていたのは、褐色矮星の回転速度です。
フィギアスケートの選手が回転するとき、腕を体の内側に引き込んでいくと回転速度も上がっていきますが、同じ原理で形成された星は冷えて収縮すると回転が速くなります。
研究チームは約80個の褐色矮星の回転速度を測定しましたが、それは非常に多様で、1回転するまでに2時間未満のものもあれば、数十時間掛かるものもありました。
ところが、この中から最高速度で回る3つの褐色矮星を特定したところ、それらはほぼ同じ1時間で1回転という自転速度を持っていたのです。
これらの褐色矮星は、木星とほぼ同サイズでしたが、質量は40~70倍あります。
木星は10時間で1回転するため、このサイズに基づいて計算すると、もっとも早く回転している褐色矮星は、時速約36万キロメートル(約秒速100キロメートル)で回転していることになります。
通常、一緒に形成された星であったり、同じ発達段階である星の場合なら、こうした回転速度の一致も頷けます。
しかし、この3つの褐色矮星は、温度も質量もまるで異なっていました。
褐色矮星は年を取るほど冷えていきます。温度が異なるということは、年齢がまるでバラバラであることを意味しています。
研究チームは、この揃った最高速度の謎について、褐色矮星には回転速度の限界が存在しており、この3つはその限界速度に達しているのではないかと考えています。
そして、この1時間1回転という速度限界を超えたとき、褐色矮星はバラバラに崩壊する可能性があるというのです。