ウイルスを嗅ぎ分ける訓練
今回の研究では、医療圏知犬のいる正規の施設はパンデミックの影響で閉鎖中だったため、別の施設にいた医療検知経験がない8頭のラブラドール・レトリバーと1頭のベルジアン・マリノアによって行われました。
こうした訓練では、まず最初にUDC(universal detection compound)と呼ばれる独特の香りがある化合物をイヌに覚えさせます。
そして、12個のサンプルを並べて、UDCのニオイに反応したイヌにご褒美をあげます。
これができるようになったら、本格的に目的のニオイを使った訓練が始まります。
チームは新型コロナ陽性患者の尿サンプルのニオイを覚えさせ、同じ様に不活性処理した陰性者の尿サンプルと並べた時に識別できるかを試しました。
3週間の訓練の後、この実験を実施したところ9匹のイヌは、陽性サンプルを平均96%の精度で識別することができたのです。
ただ、偽陰性者を避ける能力(いわゆる感度)は低かったと言います。
この原因は、研究におけるイヌの成功基準が厳しかったことも一因のようです。
一度でも陽性サンプルをイヌが反応せずに素通りすると、それはミスとしてカウントされました。
また今回の実験では、1度感染したあと回復したばかりの患者と陽性者の見分けをイヌができないという状況がありました。
研究者たちは、何度もそれが陽性とは異なることをイヌに教え込もうとしましたが、うまく行かなかったようです。
ここには、イヌを反応させる何かが存在していたのだと考えられます。
しかし、これらの一連の研究から、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルス「SARS-CoV-2」には、イヌが認識可能なニオイをもつことが示されました。
多様なサンプルを用いて訓練を繰り返していけば、イヌは新型コロナウイルスの患者をほぼ正確に嗅ぎ分けることができるようになるだろうと研究者は語ります。
彼らが活躍するようになれば、人の集まるイベントも安全に開催できるようになるかもしれません。
しかし、実験ではウイルスは不活性化されていましたが、現実ではそうも行かないので、実際イヌが感染しないように「SARS-CoV-2」を嗅ぎ分けられるのか、ちょっと心配ですね。