外来植物が日本のカブトムシの活動リズムを変えた
カブトムシは普通、夕方頃にクヌギの樹液に飛来し、深夜0〜2時に数がピークを迎えます。
そして、早朝の5時頃には大部分がクヌギから離れていきます。
しかし近年、東南アジアを原産とする外来植物「シマトネリコ」が日本に入ってくるようになりました。
シマトネリコはクヌギ同様に多くのカブトムシを惹きつけます。
柴田さんは、庭木のシマトネリコに集まるカブトムシの個体数を、2019年と2020年の2シーズンにわたって計測しました。
計測は1日に3〜5回、早朝から深夜まで続けたとのことです。
その結果、カブトムシの数は深夜0時にピークを迎えるものの、完全に夜が明けても多くがシマトネリコに残ることを発見しました。
また2020年には、各個体の詳しい活動パターンを知るため、162匹に番号をつけて追跡調査。
結果、カブトムシの多くが夜間に飛来し、数が最も少なくなる正午頃でも、ピーク時の半分が採餌や交尾を続けていました。
中には24時間以上も同じ場所に留まった個体もいたようです。
こうした活動パターンは、クヌギで見られるものとはまったく違います。
興味深いことに、台湾に自生するシマトネリコに集まるカブトムシはすべて夜行性です。
つまり、日本のカブトムシでは、これまで利用しなかったシマトネリコによって活動パターンが変化したことを意味します。
小島氏は「この発見は、利用する植物種と昆虫の活動リズムの関係を解明する上でも注目すべきもの」と指摘しました。
一方で、シマトネリコに集まるカブトムシがなぜ日中まで活動を続けるのかは分かっていません。
可能性としては、シマトネリコの樹液がクヌギより栄養価が低い場合、満腹になるまで時間がかかるという説。
あるいは、シマトネリコの樹液にカブトムシを留まらせる成分が入っているという説があげられています。
それから、柴田さんの観察によると、シマトネリコの周囲ではカラスに食べられたカブトムシの死骸がよく見つかったとのこと。
これは日中に活動することで天敵から狙われるリスクが高まっていると考えられます。
こうしたネガティブな面も含めて、外来植物がカブトムシの生態に与える影響を理解する必要があるでしょう。