調査の難しいお隣の惑星
金星は地球の隣にある惑星であり、火星とともに地球にとってはもっとも身近な天体です。
近いだけでなく、金星は地球と多くの共通点をもっていて、サイズ、質量、密度もほぼ同じ岩石惑星です。
短時間ですが表面に着陸したロシアの金星探査機ベネラの分析では、表面の岩石は、地球の花崗岩や玄武岩に類似していました。
それでも、金星の基本的な特性は不明のままです。
その原因は、金星が地球から見て太陽の側にあるため、光による観測がしづらいということ。
さらに金星は硫酸の分厚い雲に覆われていて、表面の様子が探査機を使ってもよくわかりません。
さらに非常に高温で、表面では鉛さえ溶けてしまいます。
探査機を降下させても、火星のように長い時間活動させることはできないのです。
そこでカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームは、レーダーを金星表面にぶつけて、その反射を地球上で観測するという調査を15年間続けてきました。
この調査方法を研究を主導したUCLAのジャン・リュック・マーゴット教授は、金星をディスコボールのように使ったのだと説明しています。
地球から放った強力な電波の光を、金星がディスコボールのようにきらきらと反射させ、それを見ることで、金星の詳細な情報を取得したのです。
そしてこの調査は、金星の1日の正確な長さ、軸の傾き、コアのサイズを特定することに成功したのです。
こうした情報は、金星の質量が内部でどの様に広がっているかを明らかにし、内部構造を推定するヒントを与えてくれます。
また、惑星の自転に関する正確なデータがないと、将来、本格的な金星着陸調査を行う際に、着陸地点が30キロメートル以上ズレてしまう可能性があります。
地形が複雑な惑星への降下では、着陸地点への正確なオペレーションが非常に重要となります。
そういった意味でも、今回の調査には重要な意味がありました。