悲惨な結末
衝突1週間前、この時点で小惑星の落下地点はドイツ、チェコ共和国、オーストリアの三国国境近くである可能性が99%であると算出されました。
画像のもっとも中心の濃い赤円に落下する確率は40%、その外側の円が87%、最外円の領域となる確率は99%です。
衝突による爆発は、大きな核爆弾と同じくらいのエネルギーになると考えられます。
下の画像は被害の予想範囲です。
落下地点から最大100kmに及ぶ地域が壊滅的な破壊を受ける可能性があります。
一番広く描かれている範囲は、直径300kmでこの範囲までは深刻な被害が及ぶ可能性があります。
この時点で人類にできることは、衝突によって被害を受ける予想地域の人々を事前に退避させることだけでした。
現在宇宙への監視体制はかなり強化されており、多くの人たちは潜在的に危険な小惑星を、かなり早い段階で察知できるだろうと思いがちです。
しかし、実際のところ地球近傍天体(NEO)を監視する世界の能力は、かなり不完全だといわざるをえません。
太陽から約2億キロメートル圏内を周回する宇宙岩石は、NEOとみなされます。
しかし、NASAの惑星防衛担当官であるリンドリー・ジョンソン氏は、NASAが「地球への衝突危険性のある小惑星を、全体の3分の1しか発見できていない」と述べています。
最近でも、地球に非常に接近した小惑星を、天文学者が見逃していたというニュースはたくさん報告されています。
2022年10月にNASAは小惑星に探査機をぶつけて軌道をそらすDARTミッションの実験を成功させていますが、これもかなり早期に危険な小惑星を発見できた場合の対策のため、常に有効な対策とはなりません。
6500万年前、恐竜を滅ぼした小惑星は直径が10kmもあったと考えられています。
そこまで大きいなら、かなり早い段階で気づくだろうと思ってしまいます。
しかし、直径5kmもあるネオワイズ彗星は、2020年7月23日に地球から約1億300万 kmの距離まで接近しましたが、初めて発見されたのはその4カ月前のことでした。
それまで誰もその彗星の存在には気づいていなかったのです。
2013年にロシアのチェリャビンスク上空で爆発した隕石も、事前に警告されることはありませんでした。
この隕石は、上空で爆発し、都市部の窓ガラスを衝撃で割るなどの被害を出しています。
小惑星の接近は、意外と直前まで気づけないということが明らかなため、NASAは2年前に潜在的に危険な小惑星を監視するための専用望遠鏡を打ち上げる計画を発表しました。
地球近傍天体監視ミッションと名付けられたこの計画が進めば、現在よりずっと多くのNEOを発見、追跡できるようになるでしょう。
しかし、現状では落下半年前に気づけても、小惑星に対して人類にはほとんど打つ手がないのが現実です。
今回のシミュレーションは、残念ながら悲惨な最後となってしまいました。
けれど今回の演習は、実際に危険な小惑星が発見された際、どのように状況が進展していくかを教えてくれています。
専門家たちには、その際どのように対応を考えるべきか、その機会を提供しています。