バラバラだった細胞たちが勝手に集まって心臓を形成! 心臓オルガノイドの自己組織化に初成功 鼓動し自己修復も可能
バラバラだった細胞たちが勝手に集まって心臓を形成! 心臓オルガノイドの自己組織化に初成功 鼓動し自己修復も可能 / Credit:Pablo Hofbauer et al (2021) . Cell
biology

バラバラの細胞を集め「自動的に心臓を作る」ことに成功。拍動し自己修復もできる

2021.05.21 Friday

バラバラだった細胞たちが勝手に集まって心臓をつくったようです。

5月20日に『Cell』に掲載された論文によれば、幹細胞を6種類の刺激剤で再プログラミングした結果、細胞たちが勝手に集まって(自己組織化して)鼓動する心臓のような球体を形成したとのこと。

球体の内部は左心室に類似してた空洞になっており、脈拍は内部の培養液を押し出すような動きをしていたようです。

これまで様々な人工培養臓器(オルガノイド)が作られてきましたが、自己組織化する心臓オルガノイドが作られたのは、今回がはじめてになります。

Tiny ‘hearts’ self-assemble in lab dishes and even beat like the real thing https://www.livescience.com/sesame-seed-size-heart-organoids.html
Cardioids reveal self-organizing principles of human cardiogenesis https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(21)00537-7

バラバラだった細胞たちが勝手に集まって臓器となる「自己組織化」

細胞が寄り集まって細胞塊になっていく様子
細胞が寄り集まって細胞塊になっていく様子 / Credit:Pablo Hofbauer et al (2021) . Cell

近年の急速な幹細胞技術の進歩により、単一の細胞から脳を含む多様なヒト臓器を培養できるようになってきました。

多能性を持つ幹細胞に対して適切な刺激を与えることで、脳や肝臓、皮膚、生殖器などあらゆる種類の細胞に変化させることが可能です。

興味深いことに、細胞たちの多くには自然に集まる性質があり、さらに適切な刺激を加えると実際の臓器を模倣するような複雑な構造を形成しはじめます。

この不思議な現象は「自己組織化」と呼ばれています。

例えばヒト脳細胞を培養して自己組織化させた場合、寄り集まった細胞は大脳や小脳など脳の各パーツに分化し、最終的には胎児の脳に似た複雑な脳波を発するようになります。

自己組織化の過程は高度に自動化されており、進行には特段の操作を求められません。

この恩恵は非常に大きく、研究者たちは細胞の持つ自己組織化を利用してさまざまな人工培養臓器(オルガノイド)を作り出し、人体実験の代用品として用いてきました。

禁忌の人体実験が可能に?人工臓器を組み合わせた「疑似人体」を開発

しかし唯一、心臓の自己組織化だけは上手くいっていませんでした。

心臓は子宮の中で最初に形成される臓器の1つでありながら、外部環境での培養はとても難しかったのです。

そのため既存の技術で細胞から心臓を作ろうとする場合、3Dプリントなどの外部的な方法で「形作り」を行わなければなりませんでした。

ヒトの心臓を3D印刷で作成することに成功! 細胞を材料に心臓のはたらきを再現

ですが今回、オーストリア科学アカデミー(IMBA)の研究者たちは、あえてこの難題(心臓の自己組織化)に挑み、成功します。

困難だった心臓の自己組織化を、研究者たちはいったいどんな方法で成し遂げたのでしょうか?

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