味覚が鋭いほどコロナに感染しにくい結果に
このアイデアは、研究チームが、COVID-19の主要症状である「味覚・嗅覚の喪失」について調査していたときに生まれました。
約100名の陽性者に味覚テストを行ったところ、誰一人として味覚に優れた人はいなかったのです。
そこでチームは、2020年7月1日〜9月30日の間、のべ1935名の来診および入院患者を対象に味覚テストを実施。
味覚テストには、フェニルチオカルバミド、チオ尿素、安息香酸ナトリウムで処理した3つのリトマス試験紙を用いています。
最初の2つは非常に苦いか、まったく味がしないのいずれかであり、安息香酸ナトリウムは甘味、塩味、酸味、苦味、または無味です。
この3つを併用することで、被験者の味覚レベルや、苦味受容体の変異遺伝子「TAS2R38」を持っているかどうかを判定できます。
その結果、被験者は以下の3つのグループに分類されました。
1935名のうち、スーパーテイスターは26.3%(508名)、一般的な味覚者は47.4%(917名)、非味覚者は26.4%(510名)でした。
一般的な味覚者が約半分を占め、スーパーテイスターと非味覚者がほぼ同数です。
ところが、この中からPCR検査で陽性反応が出た266名では、比率がまったく違っていました。
まず、一般的な味覚者は39.1%(104名)と少なくなったのに対し、非味覚者は55.3%(147名)と急増していたのです。
そして、スーパーテイスターはわずか5.6%(15名)にとどまっていました。
さらに、全体の55名が要入院レベルの重症患者でしたが、そのうちの47名が非味覚者だったのです。
これらのデータは、非味覚者ほどコロナに感染・重症化しやすく、味覚が鋭い人ほど耐性があることを示唆しています。
研究主任のヘンリー・バーナム氏は、これについて「スーパーテイスターが有する苦味受容体遺伝子(TAS2R38)の活性化が、コロナへの免疫反応を引き起こしているのかもしれない」と指摘。
「主にカルシウムイオンによる一酸化窒素の生成が、侵入してきたウイルスにダメージを与えている可能性がある」と考えています。
一方で、これらはデータ上で示唆された結果であり、苦味受容体がウイルスに対していかに振る舞うのかはまだ分かりません。
それでもバーナム氏は「味覚に応じた患者のグループ分けが、新型コロナウイルスへの感染リスクや予想される臨床経過を評価できる、安価で正確な診断ツールとなるかもしれない」と述べています。