地中を潜航する生き物たち
今回、開発されたロボットは、地中を掘り進んで移動します。
これまでそうしたタイプのロボットはありませんでした。
ゲームなどでは、地中を潜って移動するロボットが登場しますが、現実にそうした移動が難しいのはなぜでしょう?
研究の主執筆者であるカリフォルニア大学のニコラス・ナクレリオ(Nicholas Naclerio)氏は、「地中を進むロボットを作ろうたした場合の最大の課題は、単純にかかってくる力だ」と話します。
「地中を移動しようとすると、土や砂などの媒体を押し出さなければなりません」
この課題をクリアするために参考となりそうなのが、自然界で実際に地中に潜ることのできる生物たちです。
土や砂は粒状の媒体です。地中に潜る生物たちは、これをうまく押しのけて地面を進みます。
このメカニズムを理解することは、生物学の研究であると同時に、新しいロボット技術につながるのです。
たとえば植物の根が地面に伸びていく方法は、先端だけが成長し他の部分は静止している点に秘密があります。
先端だけが伸びることで、地中での抵抗を低く抑え掘削する場所だけに集中することができるのです。
もし体全体が成長に伴い動いてしまうと、表面全体に砂の摩擦が大きくかかることになり動けなくなってしまいます。
穴を掘る動物では、粒子を一時的に液体のような状態に浮遊させて、砂やゆるい土の抵抗を克服する「粒状流動化」という方法を利用しています。
これはたとえば、サザンサンド・オクトパスは地面に水を噴出して一時的に緩んだ砂の中に腕を使って潜り込みます。
そして、今回開発されたロボットは、これらの原理を応用して、先端部に空気を送り込み先端部だけを伸ばしながら地中を移動するという方法を採用しました。