サメの休息法は鳥と似ていた
研究チームがこれに気づいたのは、フランス領ポリネシアのファカラヴァ環礁で、オグロメジロザメ(Carcharhinus amblyrhynchos)の夜間の狩猟行動を調査していたときでした。
日中に追跡観察していると、サメの群れがある水路の上昇海流に逆らって泳ぎ始めたのです。
しかも、ヒレや尾はほとんど動かさず、じっとして海流に身を任せているようでした。
まるでベルトコンベアに乗っているかのように、サメは流れに逆らって少しずつ前進し、流されて元の位置まで戻ってはまた少しずつ前進していました。
チームは、これを一種の休息行動と考え、調査を開始。
音響追跡タグとサメに取り付けた水中カメラを組み合わせて生体力学モデルを構築し、上昇海流を泳ぐサメのエネルギー消費量を計算しました。
その結果、サメは上昇海流に乗ることで、通常の泳ぎにおけるエネルギー消費の約15%を節約できていたのです。
研究主任のヤニス・パパスタマティウ(Yannis Papastamatiou)氏は「サメは上昇海流に乗ることで体をリラックスさせ、筋肉の動きを最小限に抑えていた」と説明します。
これをもとにすれば、海流分布に従って、他のサメの休息場所を特定できると予想されます。
そこでチームは、マルチビームソナーを使って上昇海流が発生する場所を予測してマッピング。追跡センサーでこれらのスポットを監視しました。
すると他のサメの群れにも、日中に上昇海流に乗ってエネルギー消費を抑える休息行動が確認できたのです。
パパスタマティウ氏によると、この行動は「鳥類が上昇気流を利用して最小限のエネルギー消費で空中にとどまるのと非常に似ている」とのこと。
その上で「今回の成果を応用すれば、サメ以外にも、体を動かしていないと死んでしまう海洋生物の居場所を特定できると思われる」と述べています。
サメたちは日中に休息を取ることで、夜間の狩りに備えているのかもしれません。