3つの性を持つ初の藻類
藻類には、雌雄異株(ヘテロタリック)と雌雄同株(ホモタリック)の場合があり、前者はオスとメスの2つの性を、後者は両性という1つの性を持つとされています。
研究チームは、神奈川県にある相模湖川水系の湖で長期のフィールド調査を続けており、2006年には、新種の「プレオドリナ・スターリー(学名:Pleodorina starrii)」を発見していました。
プレオドリナ・スターリーは雌雄異株(ヘテロタリック)であり、オス株とメス株しかないものと考えられています。
ところが同じ湖から、ひとつの株の中でオス・メス両方の配偶子を作る両性型のプレオドリナ・スターリーが、過去10年間で2回見つかっているのです。
そこでチームは、本種のオス・メス株と両性株の比較分析、および交配実験を行いました。
まず、3つの株の間で、形態や分子レベルでの差は見られませんでした。
それから、オス・メス株と両性株の交配実験では、配偶子がくっついて接合子を作るプロセスと、その子孫の生存率が、ふつうのオス・メス株間での交配とほとんど同じ結果が得られています。
このことから、両性株もプレオドリナ・スターリーと同一であり、本種には、オス・メス・両性の3つの性別が存在することが証明されました。
これについて研究チームは、本種がオスとメスに分かれている種から両性型の種へと進化している初期段階にあるのではないか、と推測しています。
緑藻類ではこれまで、いくつかの系統で雌雄異株(ヘテロタリック)から雌雄同株(ホモタリック)への進化が確認されていますが、その初期にどんなことが起きていたかは分かっていません。
今回の研究成果は、オス・メス〜両性型への進化や、3つの性別を持つ藻類を理解するための貴重な土台となるでしょう。