スマホのライトを当てると固まる?
研究主任の生物工学者、Kibret Mequanint氏は、20年以上にわたり、さまざまな生体材料を用いた医療機器や治療技術を開発してきました。
今回、Mequanint氏が注目したのは、中南米に生息する猛毒ヘビの「カイサカ(学名:Bothrops atrox)」です。
カイサカは全長1〜2メートルで、体色はやや地味目の茶色をしており、落ち葉に隠れると、まったく見えません。
本種の毒は非常に強力で、一瞬の噛みつきで致死量の毒を打ち込むことができ、中南米で最も危険な毒ヘビとされています。
実は、Mequanint氏は大のヘビ嫌いだそうで、今回の研究もかなり苦労したと言います。
研究チームは、カイサカの出血毒に含まれていた「レプチラーゼ」と「バトロキソビン」という酵素に注目しました。
これらは、血液を凝固させる酵素として知られます。
チームは、この凝固特性を利用して、レプチラーゼとバトロキソビンを特殊なゼラチンに組み込み、まったく新しい生体組織接着剤を作成しました。
これが「スーパーグルー」です。
スーパーグルーは、注射器のようなチューブに入れて、傷口に塗布します。
その後、レーザーポインターなどの可視光を数秒間当てるだけですぐに固まります。可視光はスマホのライトや懐中電灯でも大丈夫とのことです。
チームは実証テストとして、マウスの尻尾の一部を切り取り、そこにスーパーグルーと他の血液凝固剤を塗布して、効果を比較しました。
その結果、凝固剤を塗布しなければ、血が止まるのに5〜6分かかり、他の凝固剤の中で最も強力なフィブリン糊で約90秒かかりました。
ところが、スーパーグルーはその半分の45秒で血を固め、マウスの出血量も一番少なかったのです。
Mequanint氏は「フィブリン糊と比較して10倍以上の接着力を持っており、洗い流しや出血による凝固剤の剥離にも耐えられる」と述べています。
さらに、スーパーグルーは、縫合糸を使わない外科的な傷口の閉鎖にも使用できることが分かりました。
Mequanint氏は「スーパーグルー は、戦場での応急処置や人命救助、自動車事故による偶発的な外傷への使用を想定しています。
今後は、人にも安全に使用できることを確かめるべく、臨床試験を進めていきたい」と話しています。