細菌と人類の戦い
私たちが病気になるとき、その原因はだいたいが体内に入り込んだ悪いウイルスや細菌です。
そして、体内に入り込んだ細菌を退治するための人類の武器こそが、抗生物質です。
虫歯を抜いたり、怪我をしたりしたとき、お医者さんは抗生物質を処方します。
これは傷口があれば基本的にそこから細菌は入ってくるので、あらかじめ対処するために飲んでいるのです。
そしてこうした薬が処方されるとき、絶対ちゃんと薬を飲みきってくださいね、と注意を受けるはずです。
抗生物質は体内に入り込んだ細菌にとっては毒です。
しかし、細菌は非常に適応力の高い生き物なので中途半端に抗生物質を飲むと、死なない程度に細菌を痛めつけて、彼らに耐性を付けさせるだけで終わってしまうのです。
おかわりもいいぞ、と訓練を受けて耐性を手に入れた細菌は、その後同じ抗生物質では退治できなくなってしまいます。
これを解決するには、新しい強い抗生物質を作るしかありません。それにも耐性を獲得されたら、さらに新薬を作って対処します。
実際、現在の医学はそのイタチごっこを細菌と繰り返しています。
当然、こんなことを繰り返していては、人類がジリ貧になって敗北する未来しか見えてきません。
そのため、米国疾病管理予防センター(CDC)は、世界でもっとも緊急を要する公衆衛生上の危機の1つとして、抗生物質耐性菌の問題をあげているのです。
しかし、いくら細菌の適応力が高いとはいえ、なぜこれほど簡単に抗生物質耐性を手に入れてしまうのか、またその耐性菌がなぜ容易に世界へ広がって言ってしまうのかは、よくわかっていません。
そんな中、報告されたのが今回の研究で、人類にとっては遠い霊長類の親戚といえるキツネザルの腸内から抗生物質耐性菌が見つかったというのです。