シワシワは「滑り止め」だった?
一時的にしかできない指のシワシワには何のメリットもないように思われますが、アメリカの神経科学者であるマーク・チャンギジー(Mark Changizi)氏は「人類進化の巧みさを示す比類なき例だ」と言います。
たとえば、足の指などは、プールやお風呂に浸からなくても、雨にぬれて湿った芝生の上を歩くだけで、十分シワシワになります。
チャンギジー氏は「手足の指がシワシワになるのは、単なる物理的な反応ではなく、進化の過程で、何らかのメリットがあって生じた可能性が高い」と指摘します。
理由は大きく分けて2つ。
1つは、指をシワシワにすることで、水を排出するための水路を作ること。
もう1つは、シワシワがあることで、指先の防滑性が高まり、滑り止めになることです。
英・ニューカッスル大学(Newcastle University)の研究チームは、2013年に、シワシワのある状態とない状態で、モノをつまむ実験を行いました(Biology letters, 2013)。
実験は、親指と人さし指のみを使い、容器内のぬれたガラス玉と魚釣り用の鉛を別の容器に移し替えるというものです。
その結果、指にシワシワのある状態の方が、モノを正確につまみ、はるかに速く移し変えることができました。
これと別に、指のシワシワは、タイヤの滑り止め構造に似ていると指摘されます。
タイヤが悪天候の中でも安定して走れるのは、タイヤの溝の部分が水を排出し、しっかりと路面をグリップできるからです。
これと同じ機能が、指のシワシワにもあると考えられます。
中には、指のシワシワの仕組みから、防滑性の高いシューズやタイヤの開発を進めている研究者もいるようです。
このように、指がシワシワになるのには、単なる物理的な作用以上のメリットがあると考えられます。
プールやお風呂に入った際は、ぜひシワシワの滑り止め効果を試して見てください。