人間と交流可能なセックスロボットに法的な制限はどこまで必要となるか?
人間と交流可能なセックスロボットに法的な制限はどこまで必要となるか? / Credit:depositphotos
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AI搭載セックスボットに法規制はどの程度必要なのか (2/2)

2021.08.20 Friday

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セックスロボットの利点と問題点

こうした技術の登場に批判的な人の意見は、セックスロボットの存在が女性をモノとみなすようになり、人間が生き物を扱うことに鈍感になることで性暴力を助長させる可能性がある、と主張しています。

その根拠の1つとしてあげられているのが、セックスロボットに搭載されている「ユーザーの行為を嫌がる」というプログラムです。

そういうシチュエーションが好きな人もいるのでしょうが、オーストラリアでは性犯罪を立証する重要な要素が「同意の拒否」です。

性犯罪を模倣するようなシチュエーションが用意されている事自体、問題じゃないか、というわけです。

もちろん、肯定的な意見も存在します。

セックスロボットの登場を擁護する人たちは、これが高齢者や障がい者などの性的不安を抱える人たちの悩みを解消できることや、機能不全の治療、また衛生上安全なセックスの促進、特殊で極端な性的指向を持つ人たちに安全な場所を創出できる、などの利点をあげています。

セックスセラピストに対して行われた、セックスロボットによる治療が有効と考えられる患者のトップ3は、社会不安を抱える人(50%)、パートナーがいないが一夜限りの関係や売春などに頼らずに性生活を送りたい人(50%)、早漏の人(47%)という結果でした。

法律はこうした個人の利益と、公共性についてバランスを取らなければなりません。

現在のところ、論文の発表されたオーストラリアでは、ロボットとの性交渉を規制・禁止する法律は存在していません。

しかし、南オースラリア州などでは、子供のようなラブドールの利用については規制があり、こうした状況がセックスロボットの法整備の指針となる可能性があります。

セックスロボットの存在は人を助けるのか? 性犯罪を助長させるのか?
セックスロボットの存在は人を助けるのか? 性犯罪を助長させるのか? / Credit:pixabay

現在もこうした法律は、処罰の対象としてはもっとも下限の範囲に収まるよう規定されています。

そのためセックスロボットの使用に関する法律が作られたとしても、違反に対する処罰内容は軽いものになるだろうといいます。

とはいえ、そんなもので前科が付くことは誰もが避けたいところでしょう。

こうした性的なコンテンツに対する、考え方は人それぞれのため、法整備も難しいものになります。

戦後にポルノの解禁を実行した政治家は、ポルノなど自分は嫌いだがポルノを禁止した国と解禁した国では性犯罪の発生率が大きく異るため、認めざる負えないと話していたそうです。

生理的な現象である性欲は、性的なコンテンツを規制したからといって衝動がなくなるわけではありません。

特殊な性的指向を持つ人の衝動が、ロボットに向いてくれるならば、世の中から性犯罪は減る可能性もあります。

また適切なパートナーが見つからないという多くの人を救うことにもなるでしょう。

以前、通勤者を減らすために通勤電車の本数を減らすという方法が実行されて批判を集めていましたが、手段を封じたからといってその利用者が減るとは限りません。

それは今回のような問題においても、考慮されるべきことなのかもしれません。

セックスロボットの存在が性犯罪を助長するのか、それとも性犯罪を抑制し人々に豊かな性生活を提供するのか、今後社会はその線引を考えていかなければならないでしょう。

【編集注 2021.08.20 20:15】
記事内容に一部誤字があったため、修正して再送しております。

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AI搭載セックスボットに法規制はどの程度必要なのか (2/2)のコメント

まえの

稲中卓球部を思い出す

もる

女の形をしたものへの依存を治療すればいいのでは。
これらが女の形をしていなくとも、「用」は足りるはずだろう。
そもそも、生きている人間の誰にも似ていないことが条件じゃないのか。
ラブドールに似ている、AIセックスボットに似ていると認識されることはその人への侮辱に繋がり、人権侵害を引き起こす。
自己でのコントロール不能な性衝動は、生物として正常であっても、社会的な不適合を起こしているのだから、それは月経による痛みや精神不安を薬でコントロールするように、そもそもは治療の対象であるべきなのでは。

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