分子レベルでコーヒーの「口当たり」を解剖する
近年になって、食べ物や飲み物のうま味を分子レベルで解明し引き出そうとする、分子料理の分野が盛んになってきました。
食品や飲み物がもつ独特の風味や食感を分子レベルで解明することで、誰も食べたことのないような珍味をうみだしたり、既存の食品の味を大幅に改良することが可能になります。
最も解明が進んでいる飲み物として上げられるのがワインです。
多くの研究者たちがワインの風味の秘密を求めて、様々な研究を行っています。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/88528
一方で、コーヒーは料理分野では若干の後れをとっていました。
コーヒーはワインと異なり料理に加えられる機会が少なく、そのぶん不利だったからです。
ですがコーヒーにも科学的に興味深い点が多く存在します。
コーヒーは生物が本能的に嫌う苦味を多く含んだ飲み物であにもかかわらず、その複雑な味や豊かな口当たり(質感)は多くの人を引き付け、世界中で愛されているからです。
そこで今回、研究者たちはコーヒーの複雑な口当たりを与えている分子を探索することにしました。
調査にあたってはまず、液体クロマトグラフィーを用いてコーヒーの成分を12の区画に区分けし、それぞれの区画に感じるコーヒーの質感である「粘度」「舌触り」「渋み」「重さ」を経験豊富なテイスターたちに評価してもらいました。
それぞれの区画はコーヒーを成分別に分解して作られているため、もはやコーヒーらしい味はしませんが、コーヒーの質感だけならば残っている可能性があります。
研究者たちはテイスターの助けを借りながら、区画の精製を繰り返していきました。
すると、「これまでコーヒーの複雑な口当たりは、コーヒー自体に含まれる糖類や脂肪分のせいだとされてきましたが、違った」ことが明らかになりました。