勉強が苦手な子・得意な子
小学校の簡単な知識であっても、子どもたちには大きな成績の開きが出てきます。
明らかに子どもたちの中には、学習がスムーズな子と、非常に苦労する子がいるのです。
しかし、それはなぜでしょうか?
簡単な算数の問題に躓いてしまう子どもには、なにか理由があるはずです。
数学のような基礎を積み上げていく学問では、初期の学習が非常に重要です。
ここで躓いてしまえば、その子は以降の人生すべてで数学を避けることになり、進路の選択肢もかなり制限されてしまいます。
研究者はこうした原因について、子どもの発達・形成期における、脳の興奮と抑制のレベルが学習に関連しているのではないか? という説を考えています。
この作用を持つ神経伝達物質として注目されているのが、GABAとグルタミン酸です。
GABAは主に神経細胞の活動性を低下(抑制)させ、グルタミン酸は神経細胞を活性化(興奮)させる役割をそれぞれ持っています。
この2つの神経伝達物質が学習に作用することは、マウスを使った実験などからわかっていました。
しかし、学校で行う学習とは何十年にもわたって続く複雑なものです。
実験室ベースの動物実験では、具体的にこれが人間の子どもの人生に、どのように作用しているかはほとんどわかっていませんでした。
そこで英国オックスフォード大学のリオ・コーエン・カドシュ(Roi Cohen Kadosh)氏が率いる研究チームは、この問題について数学の学習に焦点を当てて、新しい研究を行いました。
彼のチームが実行したのは、小学生(6歳)から大学生までの255人を対象に、GABAとグルタミン酸の脳内濃度と年齢別の数学的能力を分析するというものでした。
脳の活動を測定している間、参加者には数学の学力検査を受けてもらいます。
そして、同じ参加者に対して1年半後に同様の測定を行い、それぞれの測定値がどう変化しているかを調べたのです。
この縦断的な設計の研究によって、神経伝達物質の濃度が数学能力にどのように関連しているかが調査されたのです。