ティラノサウルスにも「下積み時代」があった
ティラノサウルスは恐竜時代の最後(約6800万〜6600万年前)に、捕食者として頂点に立った肉食恐竜ですが、実はそうなるまでには、下位に甘んじる長い歴史がありました。
彼らのグループ(ティラノサウロイディア類)はもともと小型種ばかりで、数千万年もの間、他の大型肉食種に太刀打ちできなかったのです。
そんなティラノサウルス以前の王者の筆頭に挙げられるのが、カルカロドントサウルス類でした。
カルカロドントサウルスは、最大全長が13メートルに達し、ジュラ紀末〜白亜紀(約1億〜9000万年前)まで、北半球の地上を牛耳っていました。
ところが、白亜紀の中盤に突然、北半球から姿を消し、南半球でのみ生息するようになります。
そのおかげもあってか、ティラノサウルスは大型化し、北半球の制圧に成功し、頂点へと昇り詰めました。
この世代交代は世界中の恐竜学者が注目している一方で、その経緯を語ってくれる化石記録が少なく、あまり理解されていませんでした。
北米で見つかった化石によると、両者が共存していた期間は約9600万〜9400万年前までで、この時期はカルカロドントサウルスが上位に立っています。
次いで、”北米の覇者”となった大型のティラノサウルスが出現するのは、約8400万年前から後のこと。
つまり、両者の世代交代の間には、1000万年ほどの空白期間が横たわっているのです。
この間に、一体何が起きたのでしょうか?
謎の空白部分を埋めるには、北半球における北米以外での化石記録、つまりアジア圏での化石が必要になります。
そこで研究チームは、中央アジアのウズベキスタン共和国に注目しました。