ティラノ以前の王者「カルカロドントサウルス」の新種を発見!
白亜紀当時はアジアとヨーロッパが巨大な海峡に隔てられ、アジアの東端に日本列島が、西端にウズベキスタンが位置する状況でした。
今日のウズベキスタン中部・ザラクドゥクには、「ビセクティ層」という白亜紀後期(約9200万〜9000万年前)に当たる地層があります。
この地層は、カルカロドントサウルス類とティラノサウロイディア類の世代交代を調べるには、最適な場所です。
また、ビセクティ層は、原始的なティラノサウロイディア類の小型竜「ティムレンギア」の化石の産出地でもあります。
ただし、大型の肉食恐竜の発見はまだ一度もありません。
本研究では、過去にビセクティ層から見つかった恐竜の上顎骨 (長さ24センチ、高さ13センチ)の化石を対象に調査しました。
その結果、既知種との系統関係を探る分析から、この化石がカルカロドントサウルス類に属するものと判明。
さらに、化石表面のシワ模様やコブ状の隆起から、新種であることが突き止められました。
これは、白亜紀後期の中央アジアにおける初のカルカロドントサウルスの記録となります。
新種の学名は、”ウズベキスタンのウルグ・ベグのトカゲ”を意味する「ウルグベグサウルス・ウズベキスタネンシス」と命名されました。
ウルグ・ベグとは、15世紀のウズベキスタン地域を統治した君主で、数学者・天文学者でもあった人物の名前です。
化石のサイズから、全長は7.5〜8メートル、体重は1トンを超えたと考えられ、同国で見つかった最大の肉食恐竜となっています。
以前、ビセクティ層から見つかった大型化する以前のティラノサウルスである「ティムレンギア」の体重が170キロと推定されているので、新種はその5倍以上の体格だったことになります。
両者の間には、圧倒的な力の差があったでしょう。
今回の発見は、アジア圏でカルカロドントサウルス類とティラノサウロイディア類が共存していたことを裏付ける初の証拠となります。
この頃はまだカルカロドントサウルスが優位な立場にあり、少なくとも9000万年前まではティラノサウルスは下位にいたようです。
これにより、謎の空白期間をわずかながら埋めることができました(上図)。
また、ウズベキスタンは恐竜の化石研究がいまだ限定的であるため、さらなる大きな発見が期待できます。
研究チームは今後、ティラノサウルスの台頭やカルカロドントサウルスが北半球を去った理由を解明するべく、アジアを中心として発掘調査を進める予定です。