900年前、中国と日本で観測された謎の超新星
西暦1181年の中国で「客星」と呼ばれた超新星が記録されています。
これは日本の記録の中にも登場しており、土星ほどの明るさで、半年間にわたり観測できたと伝えられています。
また、こうした記録では、それが空のどのあたりに見えたか、おおよその位置も記されていました。
ところが、現代の天文学者はまだこの爆発の残骸を確認したことがなかったのです。
そのため、この12世紀に起きた超新星爆発の起源は謎に包まれていました。
それを今回、マンチェスター大学を始めとした、香港、英国、スペイン、ハンガリー、フランスの国際的天文学者チームが調査を行い発見に至ったのです。
チームの論文によると、記録と該当する位置に「Pa30」と名付けられた秒速1100kmで膨張する星雲を発見したのだといいます。
これは、その速度を利用して年齢を調査したところ、その起源がちょうど西暦1181年の出来事と一致しました。
上の画像はその位置を観測したものですが、(c)の画像を見ると星雲の中心に星が映っているのがわかります。
これは2017年に発見された「パーカーの星(Parker’s Sta)」と呼ばれている天体です。
1181年に記録された超新星「SN1181」は、中国の2つの星座の間に挟まれた位置に現れたと記録されています。
広がる星雲の年齢とその中心に存在する位置は、この記録と一致した場所にあり、星雲の年齢から考えても、このパーカーの星が問題の超新星の起源である可能性が高いと、研究チームは報告しています。
パーカーの星は2つの白色矮星が合体したものではないか、という推測がこれまでされていました。
これは星の放つ光の減衰などから推測されるものです。
こうした現象は「Ⅰa型超新星」と呼ばれていて、残骸の星雲と合体星の2つの痕跡を残します。
これは宇宙全体で起きる超新星爆発の内、わずか10%程度でしか起こらない稀な現象であるため、よくわかっていない部分も多いタイプの超新星です。
今回の発見は、1181年に記録された歴史的超新星の起源を発見した報告であると同時に、珍しい「Ⅰa型超新星」の合体星と爆発による星雲という2つの残骸を確認できる貴重な発見でもあります。
歴史的な謎と天文学的な謎の両方を研究できる発見を成し遂げたとして、研究チームは「非常に嬉しいです」と語っています。