再生しっぽを完全無欠にすることがもたらす意外な利益
今回の研究により、本来は不完全だったトカゲのしっぽの再生を、完全に行える方法が示されました。
再生したトカゲのしっぽには背側が存在せず、腹側が上下に2つ重なったような構造をとっていますが、再生芽に腹側化の信号に反応しない神経幹細胞(NCS)を加えることで、新品のしっぽと同じ、背と腹があるしっぽを再生可能になったのです。
不完全な再生をしていた背景には、新品と同じく複雑な構造をしたしっぽを生やすのは、コストがかかり過ぎていたからだと考えられます。
背腹が同じ構造で作られている再生しっぽは、構造も単純で骨を軟骨で代用できるので、コストを節約可能です。
そのため完璧なしっぽを再生していたトカゲの先祖も、ある時点を境にローコストの再生しっぽを採用するようになったのかもしれません。
また今回の研究成果は再生医療にも役立つと考えられます。
遺伝子操作された幹細胞を切断面に加えるという発想は、失われた人間の手足を再生させるにあたり、大きなヒントになる可能性があるからです。